(1)「スマート物流サービス」の研究開発

「スマート物流サービス」では、研究開発項目(A)「SIP物流・商流データ基盤に関する技術」と研究開発項目(B)「自動データ収集技術」の二つの項目に関する研究開発に取り組みました。

以下に、研究開発の概要、工程及び体制(2022年4月時点)を示します。

(2)研究開発項目(A)SIP物流・商流データ基盤に関する技術

 研究開発項目(A)では、核となる物流・商流データ基盤(Infrastructure as a service (IaaS)・Platform as a service (PaaS))を研究開発しながら、この基盤を活用したアプリケーションの研究開発を同時並行で行いました。これは、ハード及び技術的なデータ基盤だけが先行し、実際の物流シーンでは利用されないというケースを防ぐための施策で、「社会実装」という点に特に重きを置き、概念実証や実際の物流現場でのテストを行いながら、アジャイル的に研究開発を進めました。

 物流・商流データ基盤(IaaS・PaaS)では、アクセス権限コントロール技術、非改ざん性担保技術、個別管理データ抽出・変換技術、他プラットフォーム連携技術といった4つの要素基礎技術に加え、業界横断的に物流・商流データ基盤を活用できるよう、標準化・共通処理方式の研究開発を進め、各業種等データ基盤を下支えするプラットフォームを構築しました。また、アプリケーションである業種等データ基盤では、地域物流、医療機器、リテール、医療材料、アパレルといった5つの業種等でアプリケーションの研究開発を進め、物流生産性を上げる新たなビジネスモデルとして社会実装を果たしました。

 また、この研究開発に関する基礎的な取り組みとして、この物流・商流データ基盤上に蓄積されたデータに対して一気通貫での可視化を図るためのデータの標準化について検討し、その成果を「物流情報標準ガイドライン」として公表し、「物流・商流データ基盤」のデータの標準形式として実装しています。

 さらに、物流・商流データ基盤に蓄積された「SIP 物流標準ガイドライン」に対応するオープンデータ等を幅広く活用するで、さらなるデータ連携や高付加価値な物流・商流サービス展開の可能性を確認するためのビッグデータ(BD)利活用の実証実験を行いました。

(3)研究開発項目(B)省力化・自動化に資する自動データ収集技術

 研究開発項目(B)では、物流・商流分野において、現在取得されていない、あるいは手間と時間をかけて人力で取得されている情報を、AI等を活用した組み込んだ最新の画像分析技術やロボット技術を活用して自動的に収集し、物流・商流データ基盤に取り込み、さらに高度化に繋げようとする研究開発を行いました。 

 本研究開発の実施にあたっては実現可能性確認段階、研究開発段階に分けて進めました。実現可能性確認段階の研究開発については、研究開発対象の実現可能性の確認を実証実験で行い、それらの中からステージゲート方式でテーマを絞り込みました。「スマート物流を支援するスマホAIアプリケーション基盤技術の研究開発」、「荷物データを自動収集できる自動荷降ろし技術の開発」の2テーマについては、公募時から研究開発段階の研究開発として選定し、研究開発を実施しました。「スマート物流を支援するスマホAIアプリケーション基盤技術の研究開発」は研究開発を終了し既に社会実装をしています。「荷物データを自動収集できる自動荷降ろし技術の開発」も研究開発を終了し、社会実装の準備を行っています。ステージゲートで選定されなかった研究テーマも研究成果を別の形で生かす等、社会実装を目指しています。

(4)「物流情報標準ガイドライン」

 「スマート物流サービス」では、業界毎のサプライチェーン(SC)の特徴を生かしたオープンでセキュリティが担保された業界毎の「物流・商流データ基盤」を構築し、その社会実装を図ることで、これまでよりも広い範囲でのデータ連携や情報共有化などによる物流の効率化・生産性向上を実現するサービス(共同運送、共同保管、検品レス、バース予約等)の提供を目指しています。

 「物流情報標準ガイドライン」は、このようなサービスの実現のために必要な運送計画情報や出荷情報、運送依頼情報などのメッセージやデータ項目の標準形式を定めるものであり、「物流情報標準ガイドライン」が活用されることで、データが異なることによる個社毎の煩雑な調整やランニングコストの削減、システム関連コストの低減等のほか、データの統一化が推進されることによる共同輸送や共同保管といったサービスの展開が容易になり、物流の効率化が進むことが期待されます。

 「スマート物流サービス」では、構築した「物流・商流データ基盤」の中で取り扱うデータの標準形式が「物流情報標準ガイドライン」により規定されています。

(参考)物流情報標準ガイドラインのHP(https://www.lisc.or.jp/